「あぁ、今休み時間なんでトイレに行ったと思います。まぁそのうち戻ってくるでしょう。」


「そう、ならいいんだけど。」


三上先生はホッと一息ついた。


「西村君はまだ保健室に?」


「ええ、とりあえず私達二人で偵察に来たのよ。」


「そうなんですか。あっ、例のアノ子が戻ってきましたよ。」


三上先生が振り返ると、向こうから海斗が歩いてきている。


「しかし、瓜二つってのはまさにこのことね。」


すると今まで黙っていたおじさんが突然、海斗の方へ走っていった。


「おい、海斗!なんで保健室から出てきたんだ?」


おじさんはまったく状況をつかめてないようだ。


「あっちゃ〜、なにやってんのよあの人は。」


三上先生はおじさんの後につづき、海斗の方へ向かった。


「ちょっと、稲岡先生!これはさっきの海斗とは違うのよ!」


三上先生は極力小さな声で怒鳴った。


「ほう、ではこの子が本当の私の息子なのだな?
海斗、私はお前の父親だ。覚えているか?」


三上先生は呆れ果てていた。こいつには何を言っても無駄なのだと。


「あんた誰?邪魔なんだけど。」


あまりに意外な海斗の言葉に、おじさんは理性を忘れ殴りかかっていった。
海斗はその拳をうまくかわして腕を掴むと、一本背負いで床に叩きつけてしまった。
その一瞬の出来事に周りにいた者は凍りついてしまった。
海斗は倒れたおじさんを見向きもせずに、教室へと入っていった。
三上先生と高岡先生はすぐにおじさんのほうへ駆け寄った。


「大丈夫ですか!」


高岡先生が声をかけ体をゆするが反応がない。