「それって天野渚じゃない?」


学校内の美人はすべて網羅していると自負している友人がそう答えた。



先日の傘の件から数日が経ったが、吉昭は彼女のことが気になって仕方がなかった。
傘を返そうにも彼女が何組なのか、いや、何年なのかも分からない。
調べようにも調べられないので、この友人なら美人な彼女のことを知っているだろう、と予測し尋ねてみたのである。
案の定、彼女の容姿についていくつか挙げたところで、友人は分かったようだった。


「俺らと同じ学年だよ。確か8組だったと思うけど。ってかお前天野のこと知らねーのかよ…。」


吉昭は開いた口が塞がらなかった。まさか、同学年だったなんて。
それより、同学年の筈なのに今まで一度も見たことがなかったことが驚きである。もう既に一年間は学校で過ごしているというのに。


「まぁ、お前友達少ないし、教室から出ないしな!」


友人は笑いながら聞き捨てならない言葉を吐いたが、今回は聞き流すことにした。
彼女の情報をより聞き出すためにも、友人の機嫌を悪くすることはしたくなかった。

「でもあいつは止めといたがいいんじゃねーか?」


これは聞き捨てならない。
吉昭はすぐに理由を問う。





「あんな冷血人間見たことねぇ。」