「走り用じゃねぇから音もそんなでねぇし、大きいからこっちの方が好きなんだ」
…と言いつつ乱暴に鍵をさしているのはどこのどいつだろうか。
言ってることとやってること、違うじゃん。
けど心なしか口が緩んでいる彼を見て、本当に好きなんだろうなぁ…とあたしも薄く笑いながら思った。
「早く乗れ」
「ん」
跨ろうと足をあげるが……
大変だ!
事件です、兄貴!
「ったく何やってんだよ」
「……(泣)」
そう、バイクがデカすぎて足がとどかなかったのだ。
タイヤデカすぎんだよ!(泣)
昨日の誰かさんみたく、唇を突き出して拗ねているあたしを軽々と持ち上げ、乗せてくれた憂依。
…あ、体重知られちゃったじゃん。
いろんな意味で泣きそうなあたしを嘲笑うかのように、バイクは音を立てて走りだした。


