「…っ、」
堪えろ、あたしは泣いてる場合じゃない。
泣きたい奴は他にもいる。
いくら憂依が珍しく長文言ったからって、難しいこと言ったからって、泣く訳にはいかない。
堪えろ、こらえろ、こらえろ、こら、え、
「ん」
「…?」
憂依があたしの頬を自分の胸に押し付ける。
そしてそのままあたしを隠すかの様に腕を頭に巻き付けた。
…窒息死しろってことか、おい。
「見えてねぇ。聞こえねぇ」
周りも、俺も。
「水分、垂れ流したって誰も気付きやしない」
だから、泣け。
憂依の腕が、体が、全部が。
そうあたしに向かって言ったような気がした。
こらえろ、こら…え
「…っ」
られない。
…もうだめだ。
「……ふ、……う…」
更にぎゅ…と抱え直すように憂依の腕に力がこもる。
「…ぐスッ……ゆうい」
「ん」
「そんな長文言えるんだね」
「ん」
「…ゆうい、」
「ん」
「ぐシュッ…ちょっとオッサン臭する…」
「…まじで」
「ぶふ…グズッ……うそ」
「お前後で泣かす」
「ふふっ…ゆうい…」
「ん?」
「あたしは…居ていいの?」
「奪ったっつったろ」
だからお前は俺のモンだ。
ぐっ…っと憂依の腕が更に強く絡み付く。
押し付けられた布が冷たくて。
こりゃ顔が酷くなっていそうだな、なんて頭の片隅で思って。
でも誰にも見られてないならまぁいいか…。


