昔っぽいレトロなエレベーターの音が鳴ったのは9階。
隣に立っている憂依はさっきの姿が嘘の様に落ち着い…おい、落ち着きすぎだろ。
もしかして饒舌なのはたまたまだったとかいう?
着流しのまま来たせいか、口に咥えてる煙草がやけに似合う似合う…
「部屋、ここか?」
表札には904の文字。
決して安くはないだろうこのマンションにいるのがガラの悪いヤンキー共だと、誰が想像しただろうか。
しかし安心、この階全部その道の人しかいないらしい。
むしろ階どころかほとんどその道的な人らしい。
…安心?
ある意味安心ではないよね?
なんて思ったのは1週間前だけ。
今ではさして気にもならないものだ。
「…ん」
「早く開けろよ」
「むしろ何で君はそんなに普通なの」
だってここ敵さん家じゃん、サキに会ったら喧嘩の始まりだよ、むしろ1番怖いのはあたしの兄貴だよ、アイツ喧嘩っぱやいんだよ。
「開けるぞ」
待ったぁ!
という暇もなく憂依は既にドアを開けていて。
此処の独特の空気があたしを包む。
まるで逃げられねぇぞ、と言われているようだ。


