「俺だって悔しい」
メンチきっていたあたしの顔の前、唇を前に突き出している憂依がアホなことを言いやがる。
「…は?」
「あんなに勇気出して書いたのに噂になったのは灰だった」
「ねぇ待って、それじゃまるで…」
まるで、わざと、みたいな…
「あぁそうだ。
あれは意図的にそうやったんだ…お前が欲しくて」
頭の中、走馬燈の様に一瞬にして記憶が駆け回る。
なぜおかしいと思わなかったんだろう。
あの日、とてもじゃないけど通学区とはいえない学校の制服を着た灰が、どうしてあたしの家付近を歩いていたのか
いきなり連れてきた謎の女を何故あーも簡単にあの部屋に通したのか
何故羽瑠や麻白、薫さん、他の皆もあたしを受け入れたのか
今思えば不自然なところはいくらでもあるのに。
全部、全部。
全部仕組まれていたことだったんだ。
「ハンナはずっと見ていたっつってたけど…俺は見ることもできずずっと我慢してた」
「…っ」
「やっと奪ったのにまた離すなんて俺は出来ない」


