真剣な声だった。
顔が見えなくても憂依が遊びで言ってるんじゃないとすぐに分かった。
「なおさら、だよ」
元々あたし達は巻き込まれた側と巻き込んでしまった側だ。
今あたしは瑠璃達と一緒にいるのだからその最初の問題はなくなったといっても過言ではないはずだ。
「本来のカタチに戻るだけだ。
あたしが居たことで動き辛いこともあったろ?
…もう好きに動けるよ」
繋がった糸を、切ろう…憂依。
膝から降りようと体に力を入れた時。
「そもそも、」
憂依はあたしを抱き上げ対面になるようにもう1回座らせた。
凄く動きが速かったのだが。神業か。
「お前が翔龍桜と関わりがあると流れたデマは、俺が原因だ」
「…嘘」
「翔龍桜のバックには霧生組が絡んでると裏の世界ではよく言われてることだ」
あたしの目を捉えて離さない憂依。
寝たせいか心なしか最初よりも顔色が良い気がする。
「分家もあってめんどくせぇ苗字だからな、基本漢字なんだけど」
「……」
「それを俺はローマ字にしたことがあって」
「ま、さか…」
「あぁ、一文字忘れた」
頭にローマ字を思い浮かべる
kiyu
kiryu
…アールゥゥゥゥ‼
「バカか!いや馬鹿か!馬鹿なのか!」
「…てへぺろ?」
「可愛くねえわ!」
裏の世界で きゆう なのか きりゅう なのかごたごたしているうちに表の世界ではよく分からない付属品がくっつき、結果。
“紀憂 音寧々は灰様にしつこく付きまとってる”
になったらしい。
「灰は女好きだから、1番そういうのの対象になる」
くそう、あの灰色頭、いつか一遍シメる…!
の前にまずはこの外見も中身もお花畑の奴からシメる!


