起こすのは気がひけるし、だからといってずっとこのままってのもな…
久しぶりに見た憂依は顔色悪くてしかも隈がヤバくて、んでもって形相もヤバくてまじで焦った。
鬼だ、マジな鬼だ、と。
その鬼さんが健やかな寝息を立てている今、やっぱり起こすことは出来ない。
でも暇なんですけど…
…あたしも寝ようかな。
背中ぬくいし、意外としっかり固定されてるし。
よし、寝よう。
ブーブーー
ケータイが震える音で目が覚めた。
嫌な予感。
ポケットに手を伸ばし恐る恐るディスプレイを見れば
——鳴海
…ですよねーー!
いい加減帰って来いってことですよね、すみません。
「もしもしなる―」
〈てめぇいつまで遊び耽ってやがる〉
お ま え か い
鳴海だと思って油断してたわ、自分のケータイで連絡しろよ。
…いやコイツから電話きても多分とんないな、ある意味正解か。
〈おい〉
「…うん、帰る」
〈甘ったれてんじゃねーぞ、お前にはやるべきことがあるんだろ〉
「…うん、やるよ、忘れてない」
チッと舌打ちが聞こえて通話は切れた。
忘れてない。
しっかりしなきゃ。
「フゥー」
「うぎゃっ…!」
コイツいきなり耳に息ふきかけやがった!
「…可愛くねぇな、もっと色気ある驚き方しろよ」
「うっさいわ」
大体いつから起きてたんだよ。
…話、聞かれてたかな。
「戻るのか」
「うん」
あたしにはやることがある。
居心地の良い所にいつまでも居る訳にはいかない。
「俺が行くなっつっても?」


