わたしは言葉が出なかった。

奈良岡クンを悼む言葉も、愛子チャンを励ます言葉も、何も言えなかった。

「奈良岡ッ!」

安土クンも号泣した。
痛々しいほど泣いた。

わたしも声を上げてただ泣きじゃくった。
悲し過ぎて、体の力が抜けて、もう立っていられなかった。

ただ、雪沢クンだけは悲しみにじっと絶えているみたいだった。

雪沢クンの奈良岡クンに対する思いがそれっぽっちと言うわけではなく、きっとそれは、雪沢クンの強さだと思う。

そんな雪沢クンの顔がとても怖かった。
まるで、奈良岡の恨みは俺が晴らしてやる、とでも言いたげな顔。
 
奈良岡クンは等々力センパイのリンチを受けて、短い一生を終えてしまった。
包帯で包み隠さなければならないほど傷つけられた顔。

「行かせるんじゃなかった。オマエをひとりで行かせるンじゃなかったよ!」

安土クンが床に向かって垂直にパンチを落とした。

「俺が甘かった。センパイのこと、勝手に美化してたんだよチキショウ!」

安土クンは何発も何発も床を殴った。
こぶしから血が滲んでいたけれど、そんなのおかまいなし。

「ごめんな奈良岡。ごめんな愛子。俺があの場に居合わせながらッ・・・」

安土クンの態度も痛々しかった。