「奈良岡のヤツ、翔陽に行ってるらしいスよ」

髪を立てた男の子が言った。

わたしは思わずそのグループを振り返った。

翔陽の奈良岡と言えば、たぶん奈良岡クンのことだ。

こんな怖い人たちの噂話にのぼっているなんて。

「近いうちに挨拶でもしてやるよ」
 
3人いる男の子のうち、ちょっとだけカッコいい子がニヤリと笑ってタバコをくわえた。
たぶんこの子は、3人の中で1番年上。
会話や態度で年が想像できちゃう。
 
でも挨拶って。

こういう人たちが言う挨拶というものが何なのか、なんとなく想像がつく。

わたしはこのことをすぐに安土クンたちに知らせなきゃいけない気がして、トイレ行くのをやめてテーブルに戻った。