奈良岡クンは国見サンを、映画館から次々と出て来る沢山の観客から守るように肩を抱いていた。
わたしが密かに憧れていた彼氏と彼女の素敵な関係。
人混みに出くわすたびに、そんな恋人たちを羨ましく眺めていた。
いつかわたしも、「彼氏」と呼べる男の子にそんなふうに守ってもらいたい、なんて思いながら。

「ううん。わたし、何にでも感動しちゃうタイプなのよ。見かけによらないでしょ?」

わたしは笑顔を作りながら、安土クンの疑問に答えて舌を出した。
こういう仕草も、本当はわたしに似合わないこと、よくわかっている。

って言うか、映画を見て泣くこと自体、わたしには似合わないことも。

でもほかに、自分の気持ちをゴマかす仕草が思いつかなかったんダ。