映画館では当たり前のように奈良岡クンと国見サン、安土クンと真希チャンが隣合わせに座った。
そして雪沢クンが、わたしのために、背もたれがパタンと閉じた椅子を開いてくれた。

悲しい指定席。
 
眼鏡をかけた冴えない女性は、ハンサムで素敵な男性をいつも陰から見ていた。
ある日、男性はその女性の些細な仕草に魅かれ、恋と自信を得た女性は見る見る美しくなって行く。
そんなありがちなストーリー。

だけどズルイ。

冴えない女性を演じてる女優サン、元はすごい美人なんだもん。
わたしのような普通の女の子が、あんなに変身できるはずないじゃない。

「どうしたんだよ? そんなに泣ける話だったかぁ?」

映画館を出たところで、安土クンがわたしの頭を右手でポコンと叩いた。
安土クンの左手には真希チャンがしがみついていた。