「ただいま。」


慣れないローファーで出来た
靴擦れの地味な痛さを
堪えながら玄関で靴を脱ぐ。


玄関の真ん中には
大学生の兄が
珍しく家にいるらしく
靴が脱ぎ捨ててあった。


…相変わらず
きったねえ性格…。

横目で見て
げんなりしていると、


「お、裕介。いいところに。」


きったねえ性格の
兄が廊下をペタペタ
歩いてきた。


ついでに俺の名前は
前田 裕介。

自由と平和と昼寝を
愛してやまない15才だ。


兄は前田 恵介

つい最近母ちゃんに
スリッパ履けるようになれって
言われてたはずだが
どうやら無理らしい19才だ。


「どうして家にいんだよ。
バイトは?」

俺がかったるそうに
聞くと、兄はけろっと

「ああ、休んだ。」

と答えた。

なんなんだそれ。
そんなんでいいのか。
社会は甘いのか。


「は?んでだよ。」

俺はふと、兄は
本当は年下なんじゃないか
と思うときが多々ある。


「今日出掛けんだよ。これから。」


何故か兄はドヤ顔で言った。

俺はげんなりして

「へえ。いってら。」

そう言って
自室に向かおうとした。