あの学校の事件から二年後。
季節は、春になった。

「なあ、緑。お前俺の職業間違えてないか?」

「間違えてなんかないだろ」

「俺は作家なの」

「売れてないからフリーのライターって扱いになってるけどな」

「全然違うし…第一……はあ」

もういい。

諦めてパソコンに視線を戻すと、仲村緑(ナカムラリョク)が笑った。
彼と知り合ったのは何の因果かーーーあの岡田組だった。

どういった事情があるのかは知らないが、緑の血の繋がってない息子が真朱…あ、いや有希と同じ高校に通っていて、二年前の俺たちと同じ様に寺田と岡田の抗争(今回は酷かったらしい)に巻き込まれた。らしい。

緑に寄れば、あの個性豊かな幹部が暴走して、岡田白雪を筆頭に、松葉、加藤、阪本、村本、永沢、多摩木(黒鳶)が部下から解雇された。らしい。

詳しいことは知らない。
阪本も、久留米の所に顔を出しているのだろうか。
最近バイトが忙しくて、行く暇がない。

ああ、それで、緑は、此処、辰砂貿易会社の取締役代表?だっけ?   らしい。
つまり結構偉い人。
年は、今年で29歳。
んで、俺は何をしてるかっていうと、

「…だせえ」

「仕方ないだろう…その年はあんまり都合がつくライターが取れなかったんだから」

「だから、ライターじゃないって言ってる…」

「分かった分かった」

緑の会社のパンフレットを作ってる。
もうこれ作家関係ないだろ、と思うが、此処は結構羽振りが良いのでバイトだと割り切ってやっている。



「…今日、卒業式か」



腕時計を見ながら緑が呟いた。

「これが入らなかったら行くつもりだった」

「…お前が行ってどうするんだ?」

「色々あんの」

「じゃ、行けば良い。代わりは幾らでもいる」

ああ、その言葉、嫌いだ。

「…やります」

緑は部屋を出て行った。
俺を放っておいて、自分は仮眠を取るのだそうだ。