「自分が一番だろ、そうに決まってんだろ! だったら利用できるものは全部利用するだろうが! 世の中金と権力なんだよ! お前らだって、」


もはや、テニスコートで颯爽とラケットを操っていた爽やかな青年と、目の前にいるこの男が同一人物だとは、信じられなかった。

一旦言葉を切って、ごくりと唾を飲んで、続ける。


「お前らだってそうだろ!? いや、人より利用できるものが多いんだからいいよなあ、お前らは。顔もいい、家もいい、頭もいい、なんでもできる、金も権力もコネもある!!」


真琴は、吉村の気迫に身を縮めていた。

誰もが呆気に取られていたが、我に返った聖が「おい、」と吉村の肩に手をかける。
だがすっかり激昂した吉村は、その手を乱暴に振り払った。


「るせえ!! お前らみたいに、なんでも揃ってる奴にはなあ、わかんねえんだろ!! 俺や丸井みたいな奴が、どんな想いで、どうやって」


怒鳴り声が、途切れた。

真琴は怯えたように、顔を真っ青にしてしまっている。

本気の怒りに、憎悪に触れることに、慣れていないのか。
それとも、吉村の言葉が堪えたのか。

吉村の言葉を遮ったのは、夏生だった。