生徒会室に場所を移してから、捕まった男子生徒はすっかり縮こまって、俯きっぱなしになってしまっている。

それも当然だろう。
この生徒会室は、彼らのテリトリーなのだ。

座り心地最高のふかふかのソファーまでもがそれを物語っていて、彼はいっそう居心地が悪そうに身を固くした。

不要と言っていい応接スペースにコの字に三つ置かれたソファーの、一番扉から遠い一人掛けで小さくなっているのが、盗撮犯だ。
その向かいには夏生が座り、間の三人掛けのソファーには、紅と准乃介が並んでいる。

直姫や聖たちは長机のほうに、傍観という名の避難をしていた。


「……で? なんで盗撮なんてしたんです」


夏生はため息を吐いて、足を組み替えた。
いつも通りの仕草だが、相手の態度が態度なので、やけに高圧的に感じられる。


「いや、あの、僕は……なにも知らな」
「なにも? なにも知らないと言ったか、今」
「ひっ!? あの、ちが、違うんです」


腕を組んで睨みを効かせる紅は、どこか言い得ぬ迫力のようなものがある。
隣では准乃介がいつもの微笑みを浮かべているから、なおさらだ。


「事実だけ言ってください、言い訳が聞きたいわけじゃないですから」


心底興味のなさそうな声で、夏生が言う。
自分はただ与えられた役目に従って行動しているだけであるという、その整然とした行動理念が、かえって厳しい。

あまりに静かな声色に、直姫たち四人は、生徒会室の隅のほうで囁いていた。


「いやこわいこわいこわい」
「なんですかあれ、魔王じゃないですか二人いるとか反則」
「てゆうか准乃介先輩なんであそこに入ってられてるんですか……!?」
「インテリヤクザさんみたいだにゃー。ヤクザさん、見たことないけろ」


部屋の隅になぜか立て掛けてある竹刀に、聖がちらちらと視線を送る。
まさか、まさかな、まさかいくら紅先輩でもあれに手を伸ばしたりはしないよな、という、そんな内心は四人共通だ。