「なにかあったの?」
「それが……あれをご覧になって」


春日さんだか増田さんだか定かでない彼女の指差す方を見ると、掲示板に、昨日はなかった張り紙が見えた。
人混みを掻き分けて前に出ると(直姫は160センチあるかないかというちびなので、それだけでも一苦労だ)、それはどうやら新聞部が毎週発行しているという校内新聞、通称『悠スポ』だ。

見出しを飾っている大きな太文字を見て、直姫は傍目にはわからないくらいに目を丸くする。


【盗撮魔出没!?
 女子更衣室覗かれる】

「と、盗撮……?」


呆気にとられている直姫に、背後から聞き慣れた声が掛けられる。
入学して最初に顔と名前を記憶した人物だ。


「直姫おはよ! 聞いてよ、昨日恋宵先輩のタコさん食べ過ぎちゃって夕飯のおかわり一回しかしなかったから、お母さんに心配されちゃって」
「真琴……ちょっと、そんなこといいからこれ見てよ」


眉尻を下げて笑う真琴の言葉を遮って、先ほどのツインテールの女子生徒と同じように、視線を誘導する。
紙面にでかでかと書かれた文字を認識すると、真琴ははっきりと目を瞠った。


「盗撮魔……って……!?」
「誰がこんなこと……」
「北校舎の更衣室ですって」
「やだ、私テニス部だからあの更衣室使ってるのに……」


二人の周囲からは、不安がる女子生徒の声がちらほらと上がっていた。
動揺しても崩れないお嬢様口調のそれらを耳に入れながら、眉を寄せた真琴は、口を開く。