「警備員から短い話があって、そのあとが、生徒会役員の紹介になるから」
「え?」


声を上げたのは、それまで全くと言っていいほど顔色を変えることのなかった、直姫だった。
眉だけがわずかにひそめられて、一瞬で戻る。


「そんなのあるんですか?」
「うん」
「全校生徒の前で?」
「当たり前でしょ」


小さく首を傾げて、口許だけで笑う。
妙にさまになったその姿に不吉を覚えた直姫の予感は、正しかった。


「わざわざ何回も面接して選んだんだから、しっかり“看板”の仲間入りしてよ、特待生」


そんな話は聞いていない――真琴と揃って絶句する。

目立たず空気のように学校生活をやり過ごそうなんて、はじめから無理な話だったのだ。
夏生の後ろで苦笑いを浮かべる聖や准乃介の表情を見て、直姫はようやく気付いた。


特待試験は、特待生を選ぶためのものではない。

端から、生徒会役員を選ぶためのものだったのだ、ということに。




(つづく)