「夏生や紅先輩に裏取引持ち掛ける度胸のある人なんてまずいないからね、最近は落ち着いてるけど」
「今回の十八人にはちゃんと注意しておいたんで、まあ大丈夫だと思いますよ」


あっさりと言う聖と夏生に、真琴が顔を引きつらせる。
そんな彼らを尻目に、紅が「さて、」と声を大きくした。


「打ち合わせを始めようか。とりあえず、理事長は不在だから、挨拶は省略される」
「え? 理事長、いないんですか」
「あの人はいっつもどっか飛び回ってるからねえ。いることの方が少ないんじゃない?」
「俺一回しか見たことなーい」
「そうなんですか……」


真琴は目を丸くしているが、直姫の記憶にある紀村悠子は、そんな人で間違いはなかった。
学校を作ったなんて聞いた時は驚いたが、理事でも相変わらずらしい。

紅は続けて、その後の大雑把な進行を挙げる。
今回の集会は、学校職員の紹介が主らしい。

馬鹿みたいに広くて豪奢なこの学校は、教員の他にも膨大な数の職員を抱えている。
食堂には和洋中のコックと給仕、パティシエが合わせて二十人ほど。
メイド服と執事服の用務員は三十人以上いる。

他に庭師や警備員、臨時講師など様々な職員が出入りしており、全て含めるとその数はゆうに百人を超えているのだ。
その一人一人すべてを紹介するわけでは勿論ないが、主な面々を並べるだけでもずいぶん時間がかかるのだろう。

だが、全校集会はそれだけでは終わらなかった。
夏生が言う。