復活した聖に尋ねられた直姫は、言葉に迷って視線をさまよわせた。
躊躇いがちに口を開く。


「父が、悠子さんと古い友人で……それで、ここの特待制度を紹介してもらったんです」
「え? コネ入学?」
「まさか。そんな甘いことしないでしょ」


夏生はやはり生徒会室の扉を閉めた途端にさっきの調子に戻り、冷めた流し目を向ける。


「けど西林寺って……聞いたことあるかな?」
「余計な詮索やめなよ。知っても知らなくても変わらないでしょ」


あの一触即発の雰囲気はどこへやら、直姫を庇うようなことまで言っている。
そんな夏生を、直姫は首を傾げながら見ていた。


(あれ、案外いい人……?)


なぜか理事長が認めているなら問題ないという意見で一致しているようだし、この分だと、他言無用の要求はなんとか考えてもらえそうだ。
もしかしたら望んでいた通りの、地味で目立たず空気のような学校生活が送れるかもしれない。

そんな後ろ向きな前途に、安心しかけていた時だった。
夏生が直姫のほうを向く。
それから真琴の顔も見て、言った。


「明日、六限に全校集会があるから。初仕事だよ」
「全校集会、ですか」
「そう、うちの学校の行事はほとんど生徒会が仕切るから。まあ、動くのは総務の准乃介先輩と、会長の俺と、副会長の紅先輩くらいだけど」


任される仕事もない新入りの直姫と真琴は、ただ生徒会として席に座っているだけのようなものらしい。
そんな軽い説明を黙って聞いている直姫には、知るよしもなかったのだ。

彼女――見た目がどうであろうと、彼女、である――を待ち受ける、ほとんど災難と言っていい数々の出来事なんて。