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「じゃあ女の子なのに男子生徒にょろ?」
「はあ……まあ……」
「なにそれチョーおもしろい!!」


嬉々として叫んだ聖の頭を、紅が思いきりはたく。
さっきの夏生とは比べ物にならない、重そうな音がした。
後頭部を押さえて悶絶する聖を横目に、紅は言う。


「詳しい事情は聞かないほうがいいんだな」
「そうしてくれるとありがたいです……」
「大方の予想はつくけどねえ」
「沖谷先輩、の考えてる通りだと思います、たぶん」


落ちつかなげに俯いたり顔を上げたりする直姫をリラックスさせようとしてなのか、「准乃介でいーよ」と微笑む。
新入役員がとんでもない秘密を抱えていることが発覚した直後だというのに、飄々とした態度は崩れていない。


「そんくらいの事情抱えた生徒なんてごろごろいるからねえ、悠綺(ここ)は。他人の痛いとこ突くなんて野暮な真似、まずしないよ」
「お、恐ろしいところですね……」


最も所在なさげに座っているのは、なぜか、真琴だった。

先輩たちのように聞く姿勢にも入りきれず、かと言って無言でただ隅っこで存在感を消しているというのも、なんとなく心象が悪そうだ。
結果、准乃介の隣で時々小さく相槌を打つという立場に落ち着いていた。
若冠十五歳にしてすでに名俳優と唱われる彼だが、案外気は小さいらしい。


「私たちは構わない、理事長が決めたことならな」
「知り合いてことは、そもそも理事長は知っててここ薦めたわけにょろねえ?」
「てゆうかあの理事長とどうやって知り合ったの?」
「あ、えーと」