仮にも顧問が、新入役員との顔合わせをさせただけで、「あとはよろしく」と帰ってしまう。
そんな大雑把な暴挙に呆然とする真琴に、准乃介が声をかけた。


「あの人いつもあんなだから、深く考えないほうがいいよ。俺は沖谷准乃介です、よろしくねー」
「あ……はい、存じ上げてます」


准乃介の挨拶が終わると、口々に名前やクラスや役職を言う。
聖や恋宵のことも、会ったことはないが知ってはいたようで、学生らしからぬ社交的な挨拶を交わしていた。

わからないことがあれば何でも聞いてくれ、とお決まりの言葉を言ったのは、紅だ。
夏生はやはりというかなんというか、名前と学年、生徒会長であるということを述べたきり、あとは必要最低限以外はだんまりを決め込んでしまった。

入学式の挨拶の爽やかさ柔和さとは全く違う無関心な様子に、真琴は困ったような顔をする。
直姫も戸惑っているのかなんなのか、わずかに表情が変わったことはわかるものの、なにを思っているのかまったくわからない無表情のままだ。
それを見ていた恋宵が、ぽつりと言う。


「直ちゃん、なんか……夏生に似てるにょろねえ」


突然の愛称呼びにはさすがに面食らったのか、「な、直ちゃん?」と小さく呟いた。
だがそんな彼の驚きは気にしないままで、聖も言う。


「あー確かに、ちょっと似てるかも」


そう言われても、直姫は夏生のことなんてまだ見た目くらいしか知っていないのだし、反応の返しようがない。
夏生も夏生で同じようなもので、これまでの印象と恋宵がじっと見ていた直姫の表情からいえば、ただ無愛想で無表情と言われているようなものである。