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やー、と変に伸びた音を発して、聖は満足げに言った。


「も~超よかったあ!! Ino最高!」


だらしなく表情を緩ませて、隣にいる夏生に「ねえ、ねえ」と声をかけては、彼の柳眉を歪ませている。

二人と一緒に東校舎と北校舎を繋ぐ渡り廊下を歩く恋宵は、照れ臭そうに笑った。
他の演奏がされている間に着替えたらしく、最後にステージに上がった彼女は、入学式で着ていた正規の制服姿ではなかった。
普段も時々着ている、特注のロング丈のブレザーを今も羽織ったままでいる。


「それはなによりですにょろ」
「ったく……なんであんたが一番楽しんでんの」
「だって生徒会が一番近くで見れたんだよ? 楽しいでしょ、テンション上がるでしょ、そりゃ」


夏生の呆れ顔も全く気にならないという様子で、聖は言った。
後ろでは、准乃介と紅も苦笑いを浮かべている。

だが、軽音楽部をバックバンドに従え、吹奏楽部からサックス奏者、三年生からドラムの実力者をゲストに呼んだInoのステージが素晴らしかったのは、確かだ。