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『──以上、私立悠綺高等学校生徒会会長、東雲夏生』


手元には何も置かず、顔を上げて新入生の顔を見渡したままで代表挨拶を終えた夏生は、そう締め括り、一礼する。

はじめはハラハラと見守っていた教師たちも、夏生の口調に一切の淀みがないのがわかると、次第に「どうだ、うちの東雲は」とでも言いたげな表情へと変わっていた。

失敗したからって叱る度胸もないくせに、なんてひねくれたことを思いながら、ステージを降りる。
途中、目が合った新入生の少女に微笑みかけると、彼女は頬を赤らめて夏生を目で追いはじめた。

ステージ横に設けられた生徒会役員のための席に戻ると、それを見ていた聖が耳打ちする。


「おい、また失神者でるじゃん、やめろよ」
「なにが? 空調管理が甘いんじゃないの」
「お前のせいで頭に血が昇んだよ」


夏生がとぼけたような顔で見ると、聖も眉を吊り上げた。
ふざけて目を細め合う二人に、新入生の間で囁き声が上がりはじめる。


「あの先輩、綺麗……」
「知らないの、“悠綺の王子様”ですわよ?」
「相変わらずお二人仲良し……」
「KNIGHTの聖くん、生徒会なの? 頭もいいのね……」
「あれ沖谷准乃介? かっこいー」
「Inoだ! すごい、テレビで見るより可愛い!」
「あそこに座ってる人、石蕗のお嬢様なんだって? 超美人……」
「え、石蕗って、あの“最強の女子高生”?」