どこの自然公園かと見紛うような、広大な敷地。

城のような門を抜ければ、リムジンが十台停まってもまだ余裕のあるロータリーと、一流ホテルのような正面玄関が控えている。
ちなみにこの校門は厳戒な警備に守られ、生徒や教師はもちろん、用務員や送迎の運転手まで、全ての人の出入りはチェックされている。

校舎は東西南北に四つあり、四方を囲った中にあるのは、完璧に整えられたシンメトリーの中庭だ。
その四つの角に接する形で、多目的ホール、二つの体育館と、広いグラウンドがある。
その四角形の辺にあたる部分には、プールやテニスコート、道場や、日本庭園が望める茶室なんてものもある。


だだっ広い敷地、充実した設備と、建築から装飾から調度品まで、全て超一級品。

まるで、金持ちが持て余した暇と財産に任せて学校を作ってしまったような、そんな様相で――事実、その通りだった。




理事長である綺村悠子という女性は、謎に包まれた人物だ。

上等のスーツと長いブロンドの髪、真っ赤な口紅と、いつも顔の半分を覆っている大きなサングラス。
常に海外を飛び回っていて、何をしているのかもよくわからない。
たまに帰ってきたと思えば、突然おかしな行事を開いてみたりする。
なぜか大きなコネクションをいくつも持っていて、名家の家柄や実業家の家などから入学者を募っていた。

そんな悠綺高校が、創立してわずかで超難関の名門攻にまで登り詰めるのは、当然の結果といえただろう。

高いセキュリティを頼って、世間の注目度の高い家の子供ばかりが入ってくる。
政治家や財閥、大手企業の経営者。

それらのスキャンダルを狙う新聞や雑誌の記者を弾き返すために、さらにセキュリティを強化する。
マスコミが入り込めないことを聞いて、学業と仕事を両立したい芸能人や、芸術家、スポーツ選手など、各界著名人までが受験するようになった。

そんなことが続いて、いつしか悠綺高校は、“有名人ばかりが通う超金持ち名門校”として名を馳せるようになったのだ。