あいつって謎だよね・・・。
 客の途絶えたスーパーのレジで、ふたりのアルバイトの女の子が話している。
 視線の先には、商品を補充する青年がいた。
 山野・・・社員のほとんどは、彼の名字しかしらなかった。もう、2年ほどアルバイトしているのに、仕事以外のことでは、誰ともほとんど話したことはなく。それでも、黙々と働いて、トラブルを起こすこともなく、ひとと接するときは、やわらかい笑顔で丁寧に話すので、害のあるタイプの人間ではなかったが、いつも、なにかバリアのようなものに包まれていた。
 もう、30歳に近いのではないか・・・。家族がいるようにも見えないし、地元の人間らしくもなく、言葉のなまりもない。それに、特徴・・・というものがない。すべて標準、そんな感じだった。
 「宇宙人みたい。」
 由里は、ひとりごとのようにつぶやいた。