それからまた桜が咲いて
ユキは二年生になった。

春は来たけどハルはいない。

ハルがいなくなってしまったことを
サークルの先輩たちに聞くために
ユキは部室へ向かった。

先輩たちは変わらずユキに挨拶をしてくれる。

でも誰一人ハルのことを口にしなかった。

ハルのことを聞くことさえできない空気だった。

まるでハルが元々存在していなかったかのように
まわりはハルのことを話そうとはしない。

サークルで仲の良かった友達にだけ

「ねえ、最近ハルくん見た?」

って聞いたけど

「誰?」

って言われてしまった。

最初はからかってるんだろうと思ったし
信じられなかったけど
誰もハルのことを覚えていないのだった。

何度も問い詰めたけど
ヘンな顔されたからそれ以上は聞かなかった。

ユキはすぐに大学の事務局へ行き
学生の在籍について尋ねた。

それでも事務の人には
そんな生徒いませんと言われた。

退学もしていないって。

意味がわからなかった。

今までユキは誰と恋をしていたのか。

あれは誰だったのか。

ユキは怖くなって
それ以来サークルへ行くこともなくなった。

本当は大学へ行くことさえも怖かった。

でも家で一人でいるよりも
大学で授業を受けていたほうが気がまぎれると
勉強に専念した。

真面目に勉強して
一年が過ぎた。

それから普通に就職活動をして
なんてことなく内定をもらった。

高校時代となにも変わらない
地味な学生生活だった。

それでもユキはハルのことは忘れてしまいたいと思い
そんなことは感がないようにした。

遊びたい
なんて考えがいけなかったのかもしれない。