ハルが姿を消した理由を話すには
なにから説明すればいいのか。

ハルは頭の中で考えながら話し始めた。

まず第一に
自分はこの世の者ではない
と、ユキに告げた。

悪ふざけでもなんでもなかった。

ユキも真剣に聞いていた。

ハルがそんな嘘をつくとは思えなかった。

「もっと・・ちゃんと説明して」

ハルの部屋に入ってから
いや
さっき道でハルに出会ってからずっと
ただならぬ空気に包まれているとユキは感じていた。

ユキはこの空気に飲み込まれないように
ハルの目を離さずに問いかけ続けた。

「簡単に言うと、天使・・かな」

「天使さまがどうしてあたしの恋人になったりなんかしたの?」

ハルはすまなそうな表情をし
一度目を閉じてからゆっくり開いた。

「ユキは・・本当に音楽が好きな子だったからだよ」

予想外の答えにユキは目をしかめた。

「・・どういうことよ」

「僕らの世界に音楽は存在しないんだ。だから時々人間界へ行って音楽を聞いているんだ」

あまりにも非現実的で
ロマンティックすぎるハルの話にユキは戸惑っていた。

「ごめん、ハルのこと信じないわけじゃないけど・・ちょっと意味がわからないわ」

「そうだろうね。でも、事実なんだ」

ハルは苦笑いをしながら言った。

「その証拠として、さっきユキがこの世界に入った瞬間、音楽が途切れたはずだろ?」

ユキはハッとした。

確かにさっき
音楽が途切れた瞬間にハルのことを思い出していた。

その時、自分のバッグから

シャカシャカ

と、音楽が漏れている音が聞こえる。

ユキはバッグからiPodを取り出した。

「あれ・・なんで?」

この世界に入った瞬間、音楽は途切れる。

でも今
ハルの部屋ではまた音楽が流れている。

「全然わかんない。どういうこと?」

「俺の部屋には音楽が存在するんだ。昔、一緒に聞いたこともあったろ?」

「もっとちゃんと説明して!」

「わかった・・ちょっと長いけど、聞いてくれるか?」

ユキは黙って頷いた。
ハルは音楽が存在しないこの世界のこと
そして自分のことを全て話し始めた。