竜城（たつき）神社の大祭は六月の夏至の日。
竜宮との間に道ができ、龍神が社に降り、この地の龍たちは竜宮への帰還を許される日とされている。

闘龍は宵宮、つまりお祭りの前日に行われる。

白衣と袴――闘龍用の装束もあつらえてもらって、和子さんが着付けしてくれた。

龍のシラユキは竹製のケージに入れられ、圭吾さんが車に積んだ。
ユキはちょっとご機嫌ななめだったけれど、ケージの上から黒い布をかけるとおとなしくなった。

「ふーん、こうやって連れていくんだ。ねえ、圭吾さんが最初に龍を見せてくれた時ってどうやって居間まで連れてきたの？」

「内緒」

短く答えてから、圭吾さんはわたしの方をチラッと見た。

「羽竜の血筋が少し変わった力を持っているのは分かっているよね？」

「うん」

「気味悪くはない？」

「ううん。だって学校の四分の一は羽竜の親戚で、その半分は何らかの力持ってるのよ。日常茶飯事になってる」

「よかった。もう最初会った時みたいに驚いてほしくないから」


まあ、あれを目の前でやられたら今でも腰抜かすと思うけど


神社に着くと、圭吾さんは片手に龍のケージを持ち、もう一方の手でわたしと手をつないだ。
境内には人が集まっていて、圭吾さんに挨拶する。
圭吾さんは軽く挨拶に答えながら、わたしを連れて境内の奥にどんどん進んだ。

「ちゃんとご挨拶しなくていいの？」

「志鶴を控え所に置いたら戻ってするよ。みんな分かっているからだいじょうぶ」