私は広い中庭へ行くと
部屋から見えた桜の木を見上げた。



木の周辺に咲く沢山の
花の香りがとても心地好い。




「姫」




背後から男性の声がしたので
驚いて振り向くと
頑丈そうな戦士服を来ている
見知らぬ男性が立っていた。

そんな彼は城内騎士と呼ばれる
私達に遣えている騎士だった。



「ノブ、と申します」


「ノブ……?」


「王子のいない間
 姫に遣えるよう王妃様から
 雇われて参りました。」


「そうなんだ」



男性というより
青年と言った方が正しいだろう。

大人びた雰囲気の彼は
どこかの国の王子様ではないかと
思うほどに美しい顔立ちだった。