何かが足りないと思い
ソファーを見ると
誰かがいた形跡もなく
ただソファーだけがあった。



「………………?」



どこへ行ったのだろう。
ダイニングテーブルのある部屋へ行き
紅茶を飲む母を見つけ尋ねた。



「ねぇ、ユウシ…みなかった?」


「あら、おはよう。
 彼なら国の業務で
 少しの間遠くへ行くそうよ。
 貧しい国の援助をしてるって
 聞いたけど。ほんと素敵な子よね」



ニコニコ話す母の言葉で
王子の人柄がよく伝わってきた。


ただ、どうしようもなく
寂しい気持ちになった。



またね、ぐらい言ってほしかった。


何も言わず
遠くへ行くだなんて。