行かないで、と。 その手を握りたかった。 「先輩………」 図書室の扉に手をかける、 廊下の向こう側にいる先輩に 聞こえるはずもないのに 小さく私は呟いた。 三宅琴乃のいる図書室へ 入っていく先輩。 「好きなのに。」 そう呟くことしか出来なかった。 勇気を出すことも 何も出来ずに。 季節は止まることなく 先輩と出会ったあの春の頃から 2度目の季節がやってくる。