確かに
私は王子様の事を知らない


藤岡勇志
高校二年生

一つ上の王子様の様な先輩


それぐらい
たったそれぐらいしか
私は王子様を知らない



「まぁあたしも最近
 氷の王子様なんてあだ名
 聞いたんだけどね~」


「なんなの、それ。
 先輩が冷たい人って事?」


「そうらしいよ?
 あんまり話してくれないし
 近づきたくても
 近寄れないオーラが
 むんむん出てるって…」


「…………嘘だぁ…」


「だから氷の王子様。
 そんな先輩と恵梨香は
 一緒に歩いてたわけ!!
 しかも二回も!!」


「…………………」



どうやら私は
すごい事をしていたらしい。


だけど

どうしても


あの王子様が

藤岡先輩が

冷たい人だなんて
思えなかった。


私に向けた笑顔は

なんだったのだろう?