「ねぇ……悠希くん、どうしたかな?」



テーブル席のさくらが、ふと悠希のことを思い出す。


「そういえば……ちょっと遅いよね」


麻紀の言葉に、下唇を噛むさくら。


「俺……ちょっと見てくるわ」

「大丈夫、あたしが見てくる」


2人の励ましで少し元気を取り戻した玲司を制し、さくらは席を立った。

小走りで店の外へと向かっていく。

その背中を見送る麻紀。




「……しかし」




不意に、玲司が口を開いた。


「さっきは……悪かったな」

「さっき?」

「エリカのこと。……嫌な気分にさせて悪かったなって」


そう言い、照れくさそうに鼻の頭をかく。




「本当だよ!」

「ええっ!?」




そう言われると思っていなかった玲司は驚きを隠せない。



「でもね……」



麻紀は真剣な表情で玲司を見つめる。


「……でも、さっきの玲司くん、ちょっとカッコ良かったよ」

「……さっきの」

「うん、携帯をグラスに落としたじゃない。なかなか出来ることじゃないって」

「ああ……」


苦笑する玲司。


「データも……全部使えなくなったろうな……」

「後先考えないからよ」


麻紀が笑う。


「新しい携帯、買わなくちゃな……」


玲司が、だんだんと落ち込んでいく姿がよくわかる。