友人の玲司の呼び出しにより、白いステーションワゴンを走らせる悠希。

夜の道路は、思いのほかすいていた。

国道から1本入ったところに、玲司のアパートはある。

少し細くなった道を行き、悠希は玲司のアパートに到着した。


予定の時間より少し早めに到着したのだが、玲司はアパートの外で待っていた。

寒そうに、コートのポケットに手を突っ込み立つその姿。

悠希の車を見ると、手を出して駐車場所を誘導してくれた。


「よう」


車から降りた悠希。

どちらからともなく、短い挨拶を交わす。


「よしっ、じゃあ行こうか!」


玲司はそう言うと、国道の方面へ歩き出した。


「どこに行くんだよ?」


悠希は玲司の後を追いながら質問をする。


「あれ? 言ってなかったっけ?」

「聞いてないよ」


玲司は足を止めない。

悠希は小走りで、玲司の横に並んだ。


「なぁ、どこに行くんだ?」

「フレアだよ」


フレアとは、玲司のアパートから歩いて10分程度のところにある洋風居酒屋だ。

悠希も何度か行ったことがある。

ログハウスを思わせるその店の作りは、不思議と温かいものを感じる。

外観もさることながら、料理の方もなかなか美味く、悠希もお気に入りの1店だ。

更には、ある特別なカクテルを頼むと、店員によるパフォーマンスショーも開催される。

1人で訪れても、十分に楽しめる店だった。


「こんな日はめったにないし、今日は2人で飲もうぜ!」


玲司は悠希の肩に腕を回す。


「……よし、今夜はトコトン飲むか!」


悠希の声は、星空に向かって吸い込まれていった。