桜の花びら舞う頃に

「こんにちは、お3人さん」


「わーい、香澄ちゃん! こんにちはー!」



それは、香澄だった。



香澄は車から降りると、微笑みながら拓海の頭をなでた。


「こ……こんにちは」


悠希とさくらも、それぞれに挨拶をする。


香澄は、さくらを一瞥(いちべつ)すると、悠希に視線を向けた。



「今日は3人なんだ?」


「え……ええ、まあ」




(はっきり言えばいいのに……)




悠希とさくらの立場を考えると、はっきり言うわけにいかないことは十分わかっている。

しかし、それでもさくらは、そう思わずにはいられなかった。


「今からね~、緑地公園に行くんだよー!」


拓海は、太陽のような笑顔で言う。


「あらっ、いいわね~!」

「香澄ちゃんも、一緒に行こうよー!」


香澄の袖を引っ張る拓海。


「ほ、ほらっ、た~! 香澄さんも忙しいんだぞ!」


悠希は、そう言って拓海を引き離そうとするが、香澄はそれを手で制する。



「別に、この後は何も用事ないのよね~」



そして、拓海を抱き上げると笑顔を向けた。



「私も……一緒に行こうかな!」