桜の花びら舞う頃に

「ありがとうございました! 失礼します」



無事に納品を終えた悠希は、病院の建物から外に出た。



駐車場に向かう悠希の身体を、夜風がそっとなでる。



「ううっ!」



思わず、身震いする悠希。

世間は、確実に秋色に染まってきていた。




星空の下、悠希はふと腕時計に目を向ける。

針は、午後8時半を回っていた。



「今から帰ると9時……た~がちょうど寝付いたところになるなぁ……」



以前、この時刻に帰ったことがあったのだが……

その時は、せっかく寝付いた拓海を起こしてしまうこととなった。

悠希の姿に興奮したのか、拓海はその後12時近くまで眠れなかったことがある。



「でも、あまり遅く帰るのも、見てくれてる義母さんに悪いし……」





~~~♪





その時、不意に悠希の携帯電話が鳴った。


「……ん? メール?」


悠希は携帯電話を開く。

差出人は、義母のすみれだった。



「『た~ちゃん、そろそろ寝るから、出来たら9時半過ぎに帰ってきて下さい』……か」



悠希は、再び腕時計を見る。



「30分くらい、時間をつぶさないといけないな……」



コンビニで立ち読みでもして、時間をつぶすかな……




悠希が、そう考えていると……





~~~♪





悠希の携帯電話が、再びメロディーを奏でる。



「ん? 今度は、着信か」



悠希は、携帯電話のディスプレイを見る。



「うわ……」



その瞬間、目の前が真っ暗になった気がした。