食事を済ませた3人は、拓海がさっきまでテレビを見ていた部屋に移動した。


ゆっくりとくつろぎながら、食後のコーヒーを楽しむ。


傍らの拓海は、満腹になった幸福感でいっぱいの様子。


スヤスヤと、規則正しい寝息を立てていた。







……というのが悠希の妄想だったが、現実は違っていた。





「ねぇ、先生! ゲームやろっ!」



「先生、これ知ってる?」



「きゃははは、わーい!」




たっぷりエネルギーを充電した拓海は、食事前よりパワーアップした感がある。

お気に入りの玩具、スケッチブックにカラーペン、絵本などを所狭しと並べている。


「……ごめんね、さくらちゃん。うるさくて」


謝る悠希に、さくらは首を振った。


「そんなことないよ。元気があって、いいと思うよ」

「わーい、先生だーいすきー!」


その言葉に、拓海はさくらの胸に飛び込んでいく。


「きゃっ……あはははは!」


さくらも、拓海を抱きしめる。


「ねぇ、先生!」


拓海は、さくらの腕の間から顔を出した。



「また、カレー作りにきてね!」



真剣な眼差しで見つめてくる拓海に、さくらの胸は熱くなった。




(やっぱり、お母さんが恋しい年頃よね……)




さくらの抱きしめる腕に力が入る。



「うん、また来るね」


「きっとだよ! きっと来てね!」


「うん、約束!」



さくらはそう言うと、拓海を解放した。

そして小指を立て、それを顔の前に持っていく。



「指切りしよっか」



微笑むさくらに、拓海も笑顔で答えた。



「ゆーびきーりげーんまーん」



2人の明るい声が響く。

悠希の心の中に、幼いころ覚えた温かさが蘇る。

目を細めながら、悠希はコーヒーを口に運んだ。



「うーそつーいたーら……」



不意に、拓海の歌が止まる。






そして━━━