ほどなくして、警官たちが駆けつけてきた。


おそらく、誰かが通報してくれたのだろう。


悠希は警官たちに事情を説明した後、さくらと拓海の元にやってきた。

後のことは、警官たちがやってくれるはずだ。


ニット帽の男は、警官たちに連行されパトカーに乗せられていった。



「ただいま、さくらちゃん」


「お帰りなさい、悠希くん」



優しく微笑む悠希。

さくらも、抱きしめていた拓海を解放し、悠希に微笑みを返す。


「はい、これ」


悠希は、取り戻したバッグをさくらに手渡した。


「ちょっと、汚れちゃったかな?」


「ううん……ありがとう……悠希くん」


さくらはバッグを受け取ると、両腕でギュッと抱きしめた。



「パパっ!」



さくらから解放された拓海は、満面の笑みを浮かべ悠希に飛びついてきた。


「うわっ、た~!」


悠希は、拓海を受け止め抱き上げる。


「あはははは!」


2人は笑いながら、2、3回その場で回転した。


「パパ、カッコ良かったよ!」

「あはは、そうか?」

「うん! やっぱり、ニンニクって大切なんだーって思ったよ!」

「……いや……お前……それは何か違う」


ふと、地面に目をやる悠希。

そこには、さくらが購入した商品が散乱していた。

叩きつけられ、踏みつぶされ、普通に使用できるものの方が少ないくらいだ。


「さくらちゃん……」

「うん、また買い直さないとね……」


さくらは、寂しそうに少しだけ微笑んだ。



悠希は唾をゴクリと飲み込む。

店内で妄想した、さくらを夕食に誘うこと。

それを、現実のものとするチャンスだった。

悠希は拳を握りしめる。

心臓の鼓動が早くなる。