さくらは、新入生1人1人の顔と名前を確認している。

さくらが名前を呼ぶと、子供たちはみな元気に返事を返し、大きく手を上げる。


「渡辺 耕平くん」

「はいっ!」

「はい、元気な声でいいねぇ。よろしくね」


さくらはニッコリ微笑んだ。

今の児童で、全ての子供たちとの挨拶が終わったさくらは、手にしていた出席簿をパタンと閉じた。



(緊張してる子が多いなぁ……)



子供たちとのやり取りの中、そう感じていたさくらは、子供たちの席と席の間をゆっくりと歩き出した。


「みなさんは、今日から1年生ですね」


子供たちの様子を伺いながら、出来るだけ優しい声を意識するさくら。


「では、1年生になって、立派になったみんなに質問です!」


さくらはポンと手を叩く。


「学校はどういう所だと思いますか?」

「はーい、勉強するところー!」


一番前の席の男の子が元気に答える。

どうやらその子は、緊張していないようだ。

悠希の隣りでは、男の子の答えにウンウンうなずく保護者が1人。


「あれ、うちの子なんですよ」


そうささやく母親に、少々、苦笑いの混じった営業スマイルを返す悠希。


「はい、よくできました!」


さくらは男の子に拍手で答える。

とても嬉しそうな男の子。

もっと嬉しそうなその母親。


「そうですね、学校は勉強するところですね」


さくらは教室の子供たちを見回した。


「……それじゃ、この他にも、学校はこんなところだよって教えてくれる人はいない?」


さくらのお願いのような更なる問いに、きょとんとした顔を返す子供たち。

さくらはぐるりと子供たちを見回す。

今回は自分から答えようとする子はいないようだ。