昼過ぎ事件は起きた。


嘘だ。


嘘、嘘、嘘。



『……』



と、虎がいる。


ちょっと、聞いてないんだけど。



「ちーかーちゃん?」



私は口元を引き吊らせながら彼女を呼んだ。


申し訳なさそうに彼女は近付いてきた。



「ごめんね」



おいおい、ごめんねで済んだら警察はいらんよ。



「昨日言おうとしてたのは、この事?」


「……うん」



溜め息。


溜め息しかでないよ。


どうしてくれんの?


この空気。


静まり返っちゃってんじゃん。



「奈緒ちゃーん!」



虎の隣にいた紅髪おにーさんが元気良く手を振りながら近寄って来る。


まじ、やめて。


何でこっち来んの?


お前か?


お前の所為だな?


私は隣に立つ千夏ちゃんを恨めしげに見つめた。


来んな、来んな、来んな。


来んなー!