悪いことは続く。


鬱なことも続く。



「神山」



それは廊下の陰から現れた。


どうやら待ち伏せしていたらしい。



「恭二」



私は、すぐさま踵を返し逃げようとした。が、強引に腕を掴まれ向き合う形になる。



「神山、殴らねーから」


「え、」



自分でも無意識に顔を覆うように腕で防御していた。


これは、きっとトラウマになってるな。



「神山……」


「離して」


「無理」


「離してっ!」


「離したら、お前逃げるだろ?」



当たり前でしょっ。



「離してよっ、……ッ」



誰か……。



「ごめん。俺……昨日、早とちりして……」


「……」



そんなこと、どうでもいい。


あー、またか……。


また醜い感情が……。



『嫉妬』



こんな感情いらないのに。


きっと恭二にとって千夏は大切な存在だから私に謝るんだ。


大丈夫。


分かってるから。


世界は私中心に回っていない。