「クッ……クックッ」


「おい、愁。笑うなら笑え」


「……ッ、はぁー。真宮さん俺、笑いすぎて腹痛いんですけど」


「知るか」



机の影から現れたのはラフな格好に白衣を纏った男。


隠れて今の会話を聞いていたのだ。



「今の子は?」


「俺んとこの生徒」


「あの顔は?」


「知らん」


「よくあるんですか?」


「いや、初めてだ」


「へー」


「神山は大人しい奴なんだがなー。腹ん中で何考えてるか、いまいち分かんねーんだよ」


「真宮さんにしては珍しい」


「どういう意味だよ?」


「いえ、別に……。それより大人しい子が文化祭主催者なんですか?」


「あいつは、すげーぞ。去年も俺のクラスだったんだがな。あいつに文化祭委員やらせたら、終わった頃にはクラスの雰囲気がガラリと変わってた」


「ん?」


「うるさいぐらい仲良くなってたんだよ。その前までにあった男女の壁もなくなってた」


「リーダー向きなんですね」


「ちげーよ。あいつにとっては、あくまでもクラスメイトが中心で自分が徹底的に裏方に回るんだ」


「……」


「いやー、あの時はびっくりしたよ」


「それより本当に、あの顔の理由わからないですか?」


「わかんねーって。でも……」


「でも?」


「あいつ相良と仲良いんだよな」


「……」



眉間に皺を寄せた三木の顔は何かを心配している顔だった。



「泉先生すいませんちょっと……」


「はーい」



白衣の教師は他の先生に呼ばれ行ってしまった。


その後、しばらく真宮は考えていた。