ヒロイン 完

「私のこと実は前から知ってたんですか?」


「覚えてない?」



体をちょっと離して指をさした。



「ドッグタグを渡した前に会ってるんだよ?」



んー?覚えてないなー。



「奈緒ちゃん授業中爆睡してたから俺起こしたじゃん」


「そんなことしょっちゅうだから…」


「なるほど真宮さんが言ってたのは本当だったのか」


「え、まっちゃん?」



あんにゃろう何言いやがった。



「学校でも指折りの眠り魔だって」


「う…否定はできません」


「あ、後ね文化祭初日さー真宮さんの顔腫れてたでしょ」


「あーうん」



何でか聞いたけど言いにくそうだったから深く追求しなかったんだよね。



「あれ、俺」



あーなんで泉さんの笑顔ってこんなに素敵なんだろう。



「前夜祭で奈緒ちゃんの肩、抱き寄せてたからお仕置きしておいた」



泉さん最強です。



「あとは?」


「学校で泉さんに会ったらどうすれば…」


「ふつーに挨拶したらいいんでない?」


「あ、あと逞さんってヤクザさんですか?」


「……」



泉さんの表情がピキッと固まった。



「違かったらいいですよ…」


「何で分かったの?」


「んー雰囲気が似てたんです」


「雰囲気?」



そう、似てたの。


だから安心したのかもしれない。


私の、あの馬鹿兄貴に…。


私は少し冷めたコーヒーを喉に通した。