あぁ、虎さん。


どうやら、あなたの女は聞き分けの悪い馬鹿な女みたいですよ。



「蓮…何で……?」



倉庫街にある一際大きな倉庫、そこが黄龍の溜まり場だった。小さい頃から危ないから近付いてはいけないと言われていたそこに、まさか足を踏み入れる日がくるとは思わなかった。


倉庫を目にし、驚いたのが人とバイクの数。どこもかしこもカラフルな髪したヤンキー達で埋め尽くされていた。


でも今、一番の問題は殺意の眼差しを私に向ける朱吏さんと、冷めた視線の幸大くん、そして涙を溜めて私を睨むあの子。


私は虎さんの顔を伺った。


無表情に見える。見えるけど、内心焦っているようにも見える。



「蓮どういうこと?」



気まずい雰囲気の中、口を切ったのは千夏。そこにいる彼女は総長の女という威厳に満ちていた。


何だか阿呆らしくなってきた。だって馬鹿みたいじゃない?



「蓮さん、私……」



帰ります…って最後まで言えなかった。



「馴れ馴れしく蓮の名前を口にしないで!」



千夏ちゃんのヒステリックな叫びに目を見開いて彼女を凝視してしまった。


千夏ちゃんは……あの子は……もう、クラスの端っこにいるような子じゃなくて。


もう、孤独を纏ったような子じゃなくて……。


もう、いつもみたいに何も知らずに笑いかけてるような子じゃなくて……。


男に執着してる、ただの女だった。