「はい、ト……蓮さん」



やばいやばい、うっかり口が滑るところだった。


虎さんは私が差し出したペットボトルを疑わしげに見つめた。



「あ、別に毒とか盛ってませんよ」


「んなこと言ってねーよ」



ドスの利いた声で返され、笑顔が引きつる。


怖っ、ちょー怖。



「あ、ストップ」



お尻のポッケから財布を取り出そうとした虎さんを慌てて制止する。


そしたら「何だよ」って睨まれた。


もーやだ、この人。何で一々する事、成すこと怖いの?


泉さんを少しは見習ってほしい。


あ、やばい。思い出したら胸が苦しくなってきた。



「お金、いいです」


「あ?」


「だから、お礼です」


「……」


「文化祭の時、助けて頂いたんで……」



だんだん声が弱々しくなりながらも言い終えると、虎さんは財布から手を離しお茶を口にした。


ホッと息を吐くと千夏ちゃんと目が合って微笑まれた。


だから私は苦が笑いで返事した。



「あぁあああああ!」



突如マメシバが吠えた。あ、間違えた。颯太が叫んだ。