幸大くんの叫びに元気良く手を挙げるほのか。



「いまーす!」



がっくり肩を落とした幸大くんは潤んだ瞳で私を見た。


う、私ですか?私は……。



「いませんよ」



一瞬、ほんの一瞬、脳裏に彼の笑顔が横切ったのは無かったことにしよう。



「まじっ!?」



やった!と瞳を輝かせた幸大君。どんだけ女に餓えてるんですか?



「まじです」



調子に乗った幸大くんが私の肩を抱き寄せた。すばやく払い除けるが、また抱き寄せられる。


苦笑している三人を余所に幸大くんは私を抱き寄せたまま旅館から出ようと歩き始めた。



『あ、』



ほのか、千夏、颯太の声が重なった。


え、何?と振り返ろうとしたら反対側から腕を掴まれ、そのまま抱き寄せられた。



「わっ!」



誰だっ?と見上げれば、そこにいたのは我等が担任。



「……まっちゃん?」


「おいコラ水城。久々に出て来たと思ったら、お前は相変わらずだな」



中指と人差し指に煙草を挟み反対の腕で私の肩を掴んでいるのは紛れもなく、まっちゃんだった。



「げ、三木」


「おい、誰に向かって口利いてんだ?」


「すみません」



愚連隊に頭を下げさせるなんて、まっちゃん何者?