『んー』


「……」


『んー』


「……」


『ん……』


「うっさい」



まじ、うっさい。


放課後の2-Cでは唸り声が木霊している。その犯人はほのかと颯太


間違っても私ではない。


テストまで一週間という貴重な時間の中、無理矢理、本当に無理矢理、学校に残って勉強に付き合わされていた。



「ねぇ、私帰って良い?」


『駄目!』


「奈緒がいなくなったら私達どうやって勉強するのよ!?」


「そうだ!そうだ!」



知るかよ。てか、私がいたっていなくたって変わんないだろ。君達が思ってるほど私頭良くないから。


いつも真ん中らへん、ブラブラしてる人間だよ?



「ほのか、ムラサキ君に教えてもらったら良いじゃん」



私はシャーペンをクルクル回しながら最もなことを言ってみた。



「無理」


「何で?」



聞いたのは私ではない。教科書と睨めっこしている颯太くん。さっきから一問も進んでいないように見えるのは私の気のせいかい?



「紫はねー、テスト一週間前になると連絡付かなくなるんだよ」


「は?」



教科書から顔を挙げた颯太くん。確かに「は?」って感じだね。



「家の中に引きこもるんだよー」


「あー、なるほど?」


「携帯も電源切っちゃうしさー。テスト終わるまで会えない」



項垂れたほのか。可哀想だなんて思わない。



「学校で会えんじゃん」



その通りだマメシバ。よく言った。



「シカトに入るから」


『へ?』



さすがの私も首を傾げた。



「教室から一歩も出ない。万が一擦れ違ったとしてもシカト。酷い奴でしょ?」



あぁ、酷い奴だ。そこまでしてテストに命を懸けるなんて。