うわー、まじで何もないじゃん。


ガラガラの棚に私の大好物の最後の一個が残っていた。


ラッキー。


手を伸ばし掴もうとした時、横から伸びてきた誰かの手とぶつかった。



『あ、』


「恭二じゃん」


「奈緒かよ」



かよって何だよ。



「いーよ、やるよ」


「え、まじ?やった」


「お前ホント好きだよな。メロンパン」


「うん」



私はメロンパンとレモンティーを購入し、恭二は何やら余り物を片っ端から買い私達は並んで教室に戻った。



「食べ過ぎでしょ」



両手に抱える恭二の食料を眉をひそめながら見つめた。



「男なら普通だ、ふつー」



そうなのかー?



「てか、お前はそれだけで足りるのかよ」


「よゆー」


「お前って少食の割にデブだよな」



こいつ乙女に向かって、なんという単語を。



「恭二、私以外の女子にそんなこと口が滑っても言っちゃ駄目だよ」



ここは大人の女性の、よゆーってヤツを見せてやった。


そしたら、ちょーしに乗りやがった。



「は?お前以外に言うわけないだろ。可哀想じゃねーか」



こいつ……。


キレた私と恭二は端から見たら、じゃれ合っているように見えたらしい。


実に心外だ。


でも、正直あんなことを言ってしまった私としては気まずくならなくてよかったとホッとした。