彼女とカノジョ

机の上には、コーヒーと紅茶。

当たり障りのない世間ばなしは済ませた。

私は、彼女と何を話して良いのか分からず落ち着かずにいた。

そんな私とは対照的に、彼女は落ち着いた様子でコーヒーを飲んでいた。

…何か話さなきゃ。。私は思いきって、彼女に話し掛けた。

「あの！拓ちゃんから、三宅さんと私が同じ大学だって聞いたんです。なに学部だったんですか？」

その瞬間、何時もは穏やかで落ち着いた様子の彼女の表情が一瞬、曇った。

一瞬の沈黙。

…不味い質問だったかな。私は、質問した事を後悔した。

私が心の中で考えている事を読み取ったかの様に、彼女は何時もの表情に戻り穏やかな口調で話始めた。

『同じ大学だったんだね。私は文学部だったのよ。』

私は彼女の普段と変わらない話ぶりを聞き、不味い質問ではなかったという安心感。そして、この話で間が持つだろうと思い安堵感を感じていた。

「私も文学部なんですよ！大塚先生って知ってますか？その大塚先生のゼミなんです」

私が【大塚先生】の名前を出した瞬間、再び彼女の表情が曇った様に感じた。

『先生は元気？』

彼女は何時もとは違い、少し暗い声で、私にそれだけを尋ねた。

「元気ですよ」

『そっか…良かった。先生は奥さまに相変わらず夢中なんでしょうね』

彼女は笑顔で、そう言った。しかし、その笑顔は心からの笑いではなく、何か複雑な感情が含まれてる様な気がした。

「先生に奥さん…？先生は独身だと思いますよ」

『えっ…』

彼女は明らかに動揺していた。
…彼女は大塚先生と何かあったのだろうか。いつも落ち着いている彼女が。。